2024年12月22日、中山競馬場に詰めかけた約12万人のファンが見守る中、第69回有馬記念(GI・芝2500m)が行われた。この日の主役は、引退レースに臨んだドウデュース(牡5歳、父ハーツクライ)だった。鞍上の武豊騎手とともにパドックに姿を現すと、スタンドからは割れんばかりの歓声が上がり、師走の中山は異様な熱気に包まれた。単勝オッズ2.5倍の1番人気に推されたドウデュースは、その期待に見事に応えてみせた。
レースは16頭立て。ゲートが開くと、逃げ馬がハイペースで先頭に立ち、前半1000mの通過タイムは59秒8と速い流れとなった。ドウデュースは武豊騎手の冷静な判断のもと、中団やや後方の10番手付近を追走。3コーナー手前から徐々にポジションを上げ始め、4コーナーでは外を回して5番手まで進出した。直線に入ると、武豊騎手がステッキを入れるまでもなく馬なりのまま加速を開始。残り200mで先頭に立つと、後続との差を広げる一方で、最後は2馬身半差の圧勝でゴール板を駆け抜けた。勝ちタイム2分30秒2は、良馬場としてはレコードに0.3秒差に迫る好タイムだった。
ドウデュースの競走成績は、通算18戦8勝(うちGI4勝)。2022年の日本ダービー制覇でその名を轟かせ、同年のジャパンカップでは海外の強豪を相手に3着と健闘した。2023年は天皇賞(秋)を制し、有馬記念では3着。そして迎えた2024年、春の天皇賞(春)では3200mの長丁場を克服して優勝し、秋のジャパンカップでも2着と安定した走りを見せた。ラストランとなった有馬記念での勝利は、まさに有終の美というにふさわしいものであった。通算獲得賞金は約19億円に上り、JRA歴代獲得賞金ランキングでもトップ10入りを果たした。
鞍上の武豊騎手にとっても、この有馬記念は特別な意味を持つものだった。55歳を迎えてもなおトップジョッキーとして活躍する武豊は、有馬記念通算4勝目を挙げ、自身の持つ最多勝利記録を更新した。レース後のインタビューで武豊騎手は「ドウデュースは本当に強い馬だった。最後の直線で手応えが残っていた時、勝てると確信した。こんな素晴らしい馬に最後まで乗せてもらえたことに感謝しかない」と声を詰まらせながら語った。管理する友道康夫調教師も「この馬は本当にタフで、大舞台になればなるほど力を出す馬だった。最高の形で引退させることができて嬉しい」と目を潤ませた。
有馬記念は1956年に創設された日本競馬の年末を飾るグランプリレースであり、ファン投票によって出走馬が選ばれるという独自の方式を採用している。中山競馬場の芝2500mという非根幹距離で行われるため、単純なスピードだけでなく、スタミナ、器用さ、そして騎手の技量が問われるレースとして知られる。過去にはオグリキャップの伝説的なラストラン(1990年)、トウカイテイオーの奇跡の復活(1993年)、ディープインパクトの引退レース(2006年)など、数々のドラマが生まれてきた。ドウデュースの2024年の勝利は、こうした有馬記念の歴史に新たな1ページを刻むものとなった。
ドウデュースは今後、北海道の社台スタリオンステーションで種牡馬として第二のキャリアをスタートさせる。父ハーツクライの後継種牡馬として期待が高く、初年度の種付け料は800万円(受胎条件)に設定された。サンデーサイレンス系の血脈を受け継ぎつつ、母方にはキングカメハメハの血も入っており、血統的な魅力も十分だ。競馬ファンの間では、早くもドウデュースの産駒がターフを駆ける日を心待ちにする声が上がっている。日本競馬の未来を担う次世代のスターが、このドウデュースの血から生まれることを、多くのファンが夢見ている。